愛にまつわる話
我が家の最寄り駅前商店街に、いかにも商店街の中にあるという趣きの靴屋さん「ライオン堂」がある。そこに1匹の犬がいる。僕はあまり犬を可愛いとか、欲しいとか思う人ではないが、その犬は間違いなく「可愛い」のだ。だから名前をつけた。
「ゴンペスケ」。
正確に書くと「ゴン・ぺ助」。何故「ゴン・ぺ助」かと言うと、それも近所にある飲み屋さんの名前で、変な名前だなとずっと思っていた。それがとっさにその犬を見た瞬間に出てきてしまった。だから僕は彼(か、彼女か知らないが)を見ると「ぺ助...」と心で呼ぶのだ。
僕は犬派でも猫派でもない。
ウサギ派だ。ずっとウサギを飼っていたから。
でも8歳ぐらいの時に犬を飼っていた事がある。白いマルチーズで名前は「ジョンソン」。
その頃、読売ジャイアンツに初の外国人選手とかいう触れ込みで、ジョンソンが入団した。幼心に「シンプルな名前だな」と思った。だから「ジョンソン」と付けた。まるで愛がない。学校から帰って来ると、彼はジョンソンなんだから野球を一緒にしなければと思い、キャッチボールを試みるのだが、ジョンソンはボールを受け取らない。ノックもしたが見向きもしない。「ジョンソン、駄目じゃないか!!」と怒ってみてもまるで無視。あげくの果てにジョンソンは雨の日に僕から逃げて、我が家からいなくなった。こんな話、聞いた事ない。
そう、最初から愛が足りないし、彼は野球選手ではない。名前は大事だ。
今、Tania Pantojaというキューバのシンガーのリミックスを手掛けているが、僕は彼女に会った事がない。前作があるのかも知れないが、聴いた事がない。
僕はたいてい、外国人との仕事をする際にその人達が住んでいる国に足を運び、彼等に会いに行って仕事を共にする。僕はその渡航費用をレコード会社から出る制作費から捻出する。最近の音楽界の傾向としては、海外との仕事をする際はデータのやりとりをインターネット上で行う事が多い。理由はふたつ。便利だし、予算を削減できる。このボーカリストと仕事をしたいと思ったら、トラック(カラオケ)を送り、歌ってもらい、その歌のデータをまた送ってもらえばいい。
実際僕も何曲かはそうして完成させた曲もある。時間と予算の都合で。ただ今でも行けば良かったなと思っている。ある日本人の作曲家が「私は曲を作っているのではない。生んでいるのだ。だから私は産曲家だ」と言っていたインタビューを読んだ事がある。僕もそうだ。生まれたものは最後まで愛する必要がある。データのやりとりでは、肝心なディレクションが人任せになってしまう。出来ればそうはしたくない。
なので、今回のTania Pantojaのリミックスは何処に愛を注ぐかで悩む。会った事がないし、これから会う予定もない。よく「LAVAさんはどうやって曲を作っているのですか?」と聞かれるが、愛とイメージを大切に作っていると言う。こう言われてもよく分からないかもしれないが、それが物を作る上では大切な事だと思う。
で、最近はパーティーが多いし、新曲のリリースもまだ遅れているから(何曲かは出来ているんだよ)、このリミックスは僕のDJ-SETの1曲目に持って来る感じで作ってみようと思い、始めてみた。要は歌っているアーティストではなく、集まるお客さん達に愛を降り注ごうとイメージしながら作り出した。これがなかなか爽やかで良い感じなのでお楽しみに。
それでこないだ、「ライオン堂」の前にまたまた「ぺ助」がいたので、見つめていたら寄ってきた。そこの女主人も寄ってきたので、
「この犬、名前はなんていうんですか?」
「ハッピーよ」
その方がいいよ。
Live 4 Love
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