オススメ本の紹介:音楽の聴き方/岡田暁生著 中公新書
音楽を言葉で表現できたら。そんなことをずっと考えているのですが、これがなかなか難しいんです。
音楽はその音楽ができた背景(文化、土地、経済など)の影響を受けて完成されます。大きな事件や災害の後には、やはりその影響が音楽にも色濃く反映されるので、そういうはっきりした背景を共有できている場合、音楽はすんなりと自分の中に落ちてきます。
音楽は自分の精神状態でも聴こえ方が随分と変わってきます。これをどうやって説明するか?というのは音楽を語る上での永遠の課題なのではないかと思います。
そんな中で出会ったのがこの本でした。この本の中で素材として取り上げられているのはクラシック音楽ですが、参考になったのでご紹介します。
筆者は嗜好や相性は必ずしも個人的なものではない。本人は純粋に自分の自発的な好みだと信じていても、それは物心ついて以来の、周囲環境からの絶え間ない刷り込みによって形成されたもの、つまり「内なる図書館」を人それぞれが持っているとのべています。
この中で語られている面白いエピソードがモンクス・ポイントの聴き比べです。
この曲はセロニアス・モンクの作曲ですが、この曲をセロニアス・モンクとジョアンナ・マクレガーというクラシックのピアニストがプレイした曲を比較します。(以下引用)
ジョアンナのプレイはタッチは清潔で粒が揃っていて、リズム感もシャープだか杓子定規ではなく、小股切れ上がった
おしゃれそのもの。クレッシェンドやデクレッシェンドの陰影は完璧な滑らかさで、まるでガーシュインのようだ。
一方セロニアスのプレイはドタ足で行儀悪く、ペタペタと歩くような右手のタッチは少なくともクラシックの常識からすれば、いかにもたどたどしい。左手のブギウギ風のリズムは貧乏ゆすりしているみたいだし、おまけに突拍子もないところで急停止/急発進を繰り返し、リズムは奇妙にひきつっている。ところが、ひとたびこの演奏を聴くと、強烈な生命力をもって聴く者の耳に焼きつけられるのである。
この曲の評価の違い、好みの問題はこの「内なる図書館」に影響されていると筆者はいいます。この「内なる図書館」はいろいろな音楽を聴くことで蓄積され、深くなっていきます。わかる音楽を聴くのでなく、わからない音楽をあえて聴くことも音楽の楽しみ方の一つであり、大切だと言います。
サウンドファインダーをご覧のみなさんに興味深いのは、レコード誕生によって、どのように当時の人々の音楽環境に変化があったか?ということだと思うのですが、その部分については第4章「音楽はポータブルか?」、第5章「アマチュアの権利」で述べられていることが示唆に富んでいて、面白い内容です。
音楽のお供にどうぞ。
9月 15日, 2011 SOUND FINDER talks | Permalink
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