2012/05/28

雑誌のご紹介:HUgEの特集はレコード! Keep Vinyl Alive

音楽雑誌以外でレコードの特集が組まれるというのはここ最近ではとても珍しい事。音楽の特集ではない、レコードの特集だ。
レコードはCDの登場以来、デジタルの荒波にも耐えてきた、20世紀最大の発明だ。一般の人からしたら「えっ!?まだレコードってあるの?」という感じだろう。しかし、レコードはどのメディアに比べても、一番音が良いメディア。だからこそ一部の熱狂的な支持者が存在し、生きながらえている。

レコードは大きさ、手触り、グラフィックを含めたデザインなど完璧なまでの完成されたアートフォーム。これこそが音楽を聴く上で不可欠な要素。そのことを分かってもらうために、DJをやるときはレコード以外使わないと言うことを徹底してやってきた。

日本以外の国ではレコードブームが再燃している。2012年現在、新譜にはレコードにCDが同封されているもの、ダウンロードクーポン券が添付されているものが増えてきた。メーカー側はTPOに合わせて音楽を楽しんでもらうための環境を整えつつある。リスナーもそれに追随し、レコードを聴こうではないか。

そんな想いをいただかせるHUgE最新号はDFAのJames MurphyやAndrew Weatherallのインタビュー、日本からは元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎がレコードについて熱い気持ちを語っています。
まだ、レコードの魅力が伝わっていない周りの友人、知人の是非この雑誌をオススメしてみてください。

1200626142 HUgE7月号はこちら


5月 28日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/26

本の紹介:歌謡曲から「昭和」を読む / なかにし礼 著

音楽はその時代を反映したものです。
政府の恣意的な介入により生み出される戦時中の音楽、戦後の自由の中で生まれる音楽は同じ作家が作っているにも関わらず、まったく異なる趣です。
歌は世につれ、世は歌につれという言葉がありましたが、音楽を語る上で、その時代背景は忘れてはならないものです。時代背景を理解することで、音楽への理解も深まると私は考えています。

この本は、音楽とそれを取り囲む社会について書かれています。
社会が発展するにつれて、音楽産業に従事する、とりわけこの本の場合は作詞家、作曲家の仕事の仕方が変わっていく過程や音楽出版社のいで立ち、そこから発展して放送局が音楽出版をやる意味などが分かりやすく書かれています。社会の発展に伴い、音楽は経済に否応なしに取り込まれていきます。

著者は自分がどのように音楽を作ってきたかという点について、あらゆる情報を遮断し、自分の魂と向き合うことで、降りてくるものを表現する。このようにして生まれた音楽が人に届かないはずがないという信念がありました。

日本全体が大きなコミュニティの中で愛された音楽が歌謡曲で、昭和という時代でした。それはマーケティング主導ではなく、本当に人が求めているものは何か?ということを追い求めた結果でもありました。

ところが音楽は「多くの人に届かない音楽は意味がない」と言う部分が曲解され、いつしか音楽をマーケティング依存型の産業に変えていきます。これがちょうど昭和から平成になるタイミングと一致しています。

昭和歌謡がブームの昨今、その時代背景を知るには最適な本です。

現代のコミュニティは「クラブ」だと著者は述べていますが、この考察についてはいささか反論の余地があります。クラブで流れている音楽についても洗練や芸術性は必要ない。若者たちが踊り騒ぐの盛り上げるような興奮や恍惚がありさえすればよい。と書かれていますが、これはあまりにもクラブを知らない人が書いている気がします。
なかにし礼/歌謡曲から「昭和」を読む Nhk出版新書

3月 26日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/19

本の紹介:かんちがい音楽評論 JAZZ編 / 中山康樹

音楽も音楽評論も経済活動の一部で、それだけを社会から切り離して考えることはできないと私は考えています。

評論とはいったいなんでしょうか?そもそもの必要性は何でしょう?

すべてのものはある程度の水準を超えると、好きか嫌いかの判断でしかありません。音楽評論はこの基準を明確にし、より多くの人が新しい音楽に出会うためのサポートをすることだったのではないかと思うのです。

レコードが流通し始めた1960年代、それはとても高価なものでした。なかなか購入できる代物ではなく、吟味して、自分にとって、珠玉の一枚を探す事は困難を極めたに違いありません。雑誌に掲載される評論を熟読し、実際に音楽が聴ける場所で気になる音楽を聴いて、どのレコードを買うかということを判断したと思うのです。
そんな経済環境の中で、雑誌やジャズ喫茶などの音楽を聴く場などが隆盛を極めたと言うのはある意味、その時代の要請だったと思います。

現代は良くも悪くもインターネットを介して、誰もが情報発信できる時代です。この前提条件を否定して、音楽はかくあるべき、評論とは何ぞやと言う話をすることは時代にそぐわない気がします。レコード・CDは一部の例外を除き、もはや高価なものではなく、コモディティ化した消費財という見方もできます。手軽に聴ける環境は、音楽や音楽評論のあり方を変えたのではないでしょうか?

この本は読者の年齢に応じて反応が違うと思うので、いろんな年代の方々に読んでもらえたらいいなと思います。

本文中に菊地成孔氏の著作にアーティスト名の記述について明らかに間違っていると指摘する部分があるのですが、著者は須永辰緒と表記するところを須永辰雄と書いています。しかも何度も間違っていますので、重版するときには辰緒と訂正したほうが良いでしょう。


中山康樹/かんちがい音楽評論 Jazz編

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3月 19日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/12

本の紹介:ベリー・ゴーディー/モータウン、わが愛と夢

611cxcu6crl_sl500_aa300_随分前に出版された本なのですが、まだ販売しているようだったのでご紹介します。
発売は1996年ですから、今からかれこれ16年前になります。Inter FMのソウルブレンドという番組に出演されている吉岡正晴さんが翻訳された400ページを超える、モータウン創始者ベリー・ゴーディによる自叙伝で、子供のころからモータウンを売却するまでの歴史が書かれています。

モータウンがインディペンデントでありながら、徐々に大手メジャーレーベルに比肩するような会社に成長していく過程での苦悩、肥大化した組織を維持するためには「ヒットを出さなければ会社が持たない」というジレンマ、音楽が好きで始めた会社がいつしか仕事としての音楽ビジネスに変化していく中で起こるさまざまな問題が赤裸々に語られています。

この本を読んでいると、音楽産業の衰退は70年代ごろから始まっていたということが感じられます。雑誌やラジオの影響力がヒットのすべてだった60年代はラジオDJを中心としたプロモーション活動に注力することで、ヒット曲を生み出すことができましたが、人々の生活に変化が生じてくると、マーケティングを軸にした販売戦略にシフトしていきます。

このマーケティングと言うのがやっかいな代物で、これが音楽をつまらなくする諸悪の根源ではないかと思うのです。

メーカーは市場を作ることが至上命題です。このミッションを達成しない限り、新たな需要は喚起できません。昨今のヒットチャートを見ていると、どれも似たような質感の音楽がもてはやされていて、明らかにマーケティング手動型の物づくりになっています。度を過ぎたマーケティングと言うのはアーティストの想像性が欠如し、粗悪品を生み出す元凶になりかねません。

こう思いながら、改めてモータウンの音楽を聴き返してみると、なかなか興味深いものがあります。
スモーキーロビンソンの声が苦手で、興味がなかなか持てなかったのですが、ここで語られている音楽についての話が面白く改めて聴いてみようと感じました。他にもいろんなアーティストとのエピソードがありますが、びっくりだったのはダイアナロスとの蜜月の日々です。ベリーゴーディには奥さんとの間だけでなく、ダイアナロスをはじめいろいろな女性と関係を持ち、子供が8人もいると言うのもこの本の中に書かれています。エネルギッシュに生きる男ってはタフですな。


ベリー・ゴーディー/モ-タウン、わが愛と夢

モータウン関連のレコードはこちら
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3月 12日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/02/02

これから子育てする新米パパへ必読の本:働けECD 私の育児混沌記 / 植本一子

植本一子/働けecd わたしの育児混沌記

ECDの妻がブログに書き綴った日記を書籍化。月給16万5千円で家族4人と猫2匹がどのように生活してきたかということが日々の出費の明細とともに書かれています。

この本は育児に真剣に向き合う妻、そしてそれを支える夫の赤裸々な日常が描かれています。
出産を機に生活は夢から現実のものに変わっていきます。二人の生活から家族の生活へ。今まで経験したことがない出来事への不安は核家族化が進む現代社会では計り知れないものがあります。
近くにお母さんがいたら、そう思う女性は少なくないでしょう。その心の内を隠すことなく表現した筆者に共感する女性は少なくないはずです。

仕事と育児の両立はだれもが思い悩む問題ですが、筆者はこの問題に真正面から向き合いひとつひとつ解決していきます。家族が新しく増えることで夫婦間には微妙な変化が生まれます。今まで話さなくても理解し合えたことや、気にならなかったことが気になって仕方がなくなるなど、子育てをしている夫婦ではだれでも経験することですが、この日常ありふれた光景で、ラッパーECDの献身的に妻を支える姿は、すべての男性が見習うべき姿です。
自分自身を振り返ると、ここまでできたかな?と考えてしまいますが、手がかからなくなったお子さんをお持ちのお父さんもご一読を勧めます。そして、読み終わった後、感謝の気持ちを奥さんに伝えましょう。

しかし石田さんはレコードとCDばっかり買ってます。ここも見習いたいところです。

ECDのレコードはこちら
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2月 2日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/01/10

オススメ本の紹介:森正人/大衆音楽史 -ジャズ、ロックからヒップホップまで 中公新書

新年皆様におめでとうございます。
今年も素敵な音楽にであることを願っております。

最近サウンドファインダーでは音楽を聴くだけでなく、読んで楽しいものをご紹介しています。
昨年末発売されたジャズ・エピソード傑作選「だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ?」
多くの方々からご評価いただいており、店頭でご覧になった!と言う方やネットですでに注文した!とか、そういう方が
いらっしゃるのではないでしょうか?

よくありがちなディスクガイドではなく、ジャズミュージシャン達のエピソード集ですので、人にこっそり話したくなる、そんな内容になっております。ご覧になっていただければ幸いです。

こちらに菊地成孔氏と翻訳者である鈴木孝弥氏の往復書簡が掲載されています。合わせてご覧ください。



さてさて、今回のオススメ本ですが、森正人/大衆音楽史 -ジャズ、ロックからヒップホップまでという本です。
音楽の起源からジャズ、ブルース、ロック、ヒップホップまでの流れを書いています。
興味深かったのは、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカを結ぶ三角貿易からの考察です。著者は文化人類学が専門の方ですが、音楽を文化という視点からとらえ、音楽そのものに深く言及するわけではなく、どのような人やものとのかかわりにおいて音楽が生まれ、伝播していったかということを語ります。

人や物が移動することによって音楽が生まれ、それが現地の音楽と融合し、新しい音楽を生み出していく様子、第2次世界大戦後のモダンブルースからR&Bにつながっていく様子、さらにはそこから生まれたロックンロールについて言及されている点に、自分の音楽的趣味の広がりとダブらせて読まれる方は少なくないはずです。
音楽ならなんでも聴くと言う方、是非ご一読を。

1月 10日, 2012 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/09/17

オススメ本の紹介:ジャズ・ミュージシャン3つの願い/パノニカ ドゥ コーニグズウォーター

マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の願いごとは「白人になることだ!」った。

1960年代、パノニカ・ドゥ・コー二グズウォーター(Pannonica de Koenigswarter 愛称ニカ)は、300人のジャズ・ミュージシャンに「あなたの3つの願いごとはなに?」と質問した。ジャズ・ミュージシャンの願いごとと、ニカ自身が撮影したミュージシャンたちのスナップ写真。こんなジャズ本は見たことがない。

ジャズ・ミュージックの抽象性に対して、 ジャズ・ミュージシャンたちの願いごとが非常に具体的・現世的なのが面白い。音楽(演奏)、愛(とセックス)、お金、仕事の現場、健康、家族と、身の回りに関することばかりである。ジャズ・ミュージシャンが、なによりも「演奏をする人(=プレイヤー)」であることを一義的に考えていたからではないか。ロック・ミュージシャンなら何と答えたのだろう、ジョンやポールなら、ミックやキースなら、そんなことを想像するのも楽しい。

世界を代表する富豪であるロスチャイルドの家系に生まれたニカは、超のつくセレブであった。まだ人種差別の厳しい時代、黒人が多いジャズ・ミュージシャンのよき理解者、親友、パトロンとして、彼ら彼女らをおおいにサポートした。彼女は、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)セロニアス・モンク(Thelonoius Monk)の最後を看取ったことでも知られている。彼女の住まい(通称「キャットハウス(Cathouse)」)はジャズ・ミュージシャンのたまり場だった。そこでの写真に写るジャズ・ミュージシャンたちは、みなリラックスした表情をしている。それはニカとの関係性を反映したものなのだろう。人種や生い立ちを越え、ジャズを理解し愛するものどおしの、本当の友情に結ばれた関係。当時、白人に見くびられないように、服装と物腰を崩すことなく、知的でクールな印象を与えようとしてきたジャズ・ミュージシャンたちが、ニカの写真の中ではシャツの襟を緩め、穏やかに微笑んでいる。

この本で300人のジャズ・ミュージシャンの素顔に触れてみてほしい。音楽史におけるジャズやジャズ理論についての解説、チャーリー・パーカーマイルス・デイヴィスなど数人の偉大なジャズ・ミュージシャンについての自伝や研究の書籍はこれまも多く出版されてきたが、本書のように、ある時代のジャズ・ミュージシャンの、親密で温かな私的な関係の記録は目にしたことがない。300人の短い言葉とスナップ写真から、ジャズという音楽の本質が垣間見えるような気がした。

パド・パウエル(Bud Powell)のほか数名のミュージシャンが「日本に行きたい」と語っている。当時のジャズ・ミュージシャンにとって、日本はどのような国に見えていたのだろう。自分自身もピアノを演奏するボクは、穐吉(秋吉)敏子の願いごとに最も深く共感した。

「心のなかにあるものを、すべて演奏できるピアニストになりたい。もしその願いが叶ったら、次に2番目と3番目の願いごとが生まれるはずだわ」。

これはジャズに限らず、ミュージシャン全ての願いかもしれない。

丸山桂(SOUND FINDER

パノニカ ドゥ コーニグズウォーター / ゲーリー ギディンズ / 鈴木孝弥/ジャズ・ミュージシャン3つの願い ニカ夫人の撮ったジャズ・ジャイアンツ

9月 17日, 2011 本の紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)